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連載 『香りはロイヤルミルクティー』 10 最後の学園祭    [香りはロイヤルミルクティー]

 過去に誰かが遺した名言 『学園祭は一生に3回しかない』

その3回目の最終日がやってきた.
泣いても笑っても今日1日.ただ学園祭をブラブラと見て歩くだけの生徒なら
こんなこと気にも留めないだろう.
けれど僕たち学園祭を形作る人間にとって、それは重大なことだった.

『学園祭は一生に3回しかない』 1年生の頃こう聞かされた時、そんなに大袈裟な
ものかなぁと思った. 今、その真意をひしひしと感じていた.
こんなに楽しいことがもう2度と味わえないなんて.
もっとも、楽しいことよりしんどいことの方が多かったりするのだけど、それさえも
楽しみに転じてしまえるこのワクワクした気分はなんなのだろう.

 とにかく、3日目.音楽部の発表が終って、M高ソングの決勝が終って、
後片付けの時間.これがしんどい.
我々視聴覚委員会の場合、この時間に屋体のシステム機材を校庭に運ばなければ
ならない.へとへとになった体に機材の重さがズシーとのしかかる.
「暑いよ-、重いよー、だるいよー、のど乾いたよー、寝たいよー」

 16時、閉祭式.16時半、ファイアーストームの点火が迫る.造形もアーチも
飾り付けもすべて校庭の真ん中に集められて燃やされる. 地に還す. 気に還す.
点火方法が変ってる.校舎の屋上から校庭の真ん中まで1本のワイヤーが張られる.
そこを花火に点火されたシャトルが滑走し、みごと1発で点火したらご喝采.

 『・・・・・・タタタタタッタター!』 ブラスバンド部によるファンファーレが鳴り響く.
みんなの目が一斉にシャトルに注がれる.
『シュウウウウゥ・・・』という音を残して僕らの頭上を滑り降りていく.
『行けー行けー!』 あちこちから思わず声が上がる. そして一瞬の沈黙.
『ゴオオオッ』  『やったぁー!!』 大成功だ.みんなの心が弾け飛ぶ.

ファイヤーストーム.jpg

 炎を囲んでフォークダンスが始まる.
みんな行ってしまって、正面テントは僕1人になった.
僕はダンスのテープをかけながら炎を見つめていた.
と、景色がグニャーと歪み始めた.どんどん歪んで炎の形もわからなくなってしまった.
あれ、なんで泣けるんだろ.

 19時. 終った. すべて終った.人々が夕闇の中に散っていく. 『また来年』
その来年は僕にはない.
みんながテントの所に帰ってくる.僕は無意識のうちにヨシユキの姿を捜していた.
ヨシユキも同じらしかった.互いの姿を見つけると、がっしりと抱き合った.
『よくやったなあっ』 僕たちはお互いの3年間の労をたたえ合った.

そして恒例の視聴覚の引き継ぎ式が始まる.
委員長のカツヤがあいさつをする.カツヤもすでに泣いている.
『胴上げだァ』 後輩の誰かが叫ぶ.
カツヤが舞う. ヨシユキが舞う. ムラサワが舞う.   そして 僕が舞う.

あとの記憶は定かではない.
『がんばれよーっ』と言って後輩の手を握りまくった気がする.
こうして絵に描いたように感動的に1つのピリオドを打った.
でも、3年生には最後の仕事が残っていた.

1週間後に、NHKのコンテストがひかえていた.
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