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連載 『香りはロイヤルミルクティー』 2 相合い傘   [香りはロイヤルミルクティー]

 モトヒロ君と交友関係が始まったのは1年生の5月の終わり頃、学園祭の準備が
始まったあたりからだった(わがM高の学園祭は6月開催)
以後3年間、彼とは同じクラスであり、6年経った今(これを書いた当時)でも親しく
交友している.
モトヒロ君は僕と違って優秀で、後にMARCHと言われる大学の1つに進むのだが、
趣味趣向が似通っていたため、出来の悪い僕なんかと3年間べったり付き合って
もらって感謝している.

学園祭の役割分担で僕は『造形』のクラス責任者に任命されてしまった.
『造形』というのは、各クラスで1つ4×4×4mのスペース内で何か立体的な物を造る、
というもので、生徒や来場者の投票によって順位が付けられる.過去の例を見ると
木を骨組みにして紙でまとった、言わばハリボテのような物が多かった.
今まで班長すらやったことがない、というほどリーダーシップのない僕だったから、
いきなり責任者といわれても困ってしまう.
とにかく自分なりに図面を描いてクラスの議長であるモトヒロ君の所に持って行った.
それを見た彼は「おー」と歓喜の声を上げ、その瞬間から意気投合してしまったのだ.
僕は等身大のC-3POとR2-D2を提示してしまったのだ.

starwars68.jpg

クラスの造形の係は10人位いたのだが、結局余人の出る幕もなく僕達2人だけで
ほとんど作ってしまった.予定では宇宙船のコックピットで2体が上図のポーズで
立っている、というものだったが、予算の都合でコックピットはちゃちな物になって
しまったし、時間の都合でR2-D2も未完成だったが、それでもC-3POはよく出来た.
並んで写真を撮る人などもいて、他のクラスとはまったく違った造形ということもあり
結構ウケはよかった.

 その学園祭も2日目.僕はある女生徒から正門前のアーチの所に来て下さいと
呼び出しを受けた.
モシカスルト、と妙な期待を持って行くと、150㎝あるかないかの小柄で可愛い生徒が
現れた.同級かと思ったが、胸のバッジの白色が3年生であることを示していた.
「あのロボットを譲っていただけませんか」
「は・・・・・?!」
予想だにしなかった突飛な展開に言葉を失っていると彼女は続けた.
「ある施設の子供があれを見てとても欲しがっているので・・・」
「あぁ、そういうことなら・・・もう1人と相談してみます.たぶん大丈夫だと思います」
学園祭関係の物は全て最終日のファイアーストームの時に燃やす事になっていた.
どうせ燃やしちゃうんだからあげてもいいんじゃない?とモトヒロ君も言うはずだ.
折から6月の雨が降っていた. 「入りませんか」
手ぶらで来た僕を彼女はアーチから校舎までの間、傘に入れてくれた.
女性と相合い傘は初めてだった.ほんの100mほどの距離.
ずーっと続けばいいと思った.

しずく.JPG


一体誰がどこで見ていたのか、こういう話というのはすぐ広まるもので、クラスの男は
「その後彼女とどぉ?」なんて訊いてくる.
「どーもこーもあれだけだってば、あれだけ!」
それが事実であるだけに寂しいところだ.
数日後、手紙が来た.
子供の描いたスターウォーズの絵とともに 『ジュースでもどうぞ』と1000円札が
同封されていた.絵は色鉛筆で描かれていて、見たところ幼稚園くらいの感じだった.
ダースヴェイダーやタイファイター等もあって本当にスターウォーズが好きらしかった.
「なあ、これ2人で分けちゃっていいかなあ?」
「いいんじゃないのォ、他の人、手紙が来たこと知らないし」
ということで1000円は本当に2人のお茶代になってしまった.
あとで詳しく述べるが、高校生の僕らにとってお茶代は貴重だったのだ.

翌年は僕が他の事で忙しかったので、モトヒロ君が造形の責任者になった.
彼が図面を描いてくると僕はそれを見てやはり「おー」と歓喜した.それでキマリ.
普通はクラスの造形係があーだこーだ言いつつ決めるらしいが、この頃になると
2人のコンビは 「あの2人は何考えてるかわからんよ」 と特別視されていたので、
すべて任せてもらえたのだ.
ピラミッドシティと名付けられたそれは、やはり他のクラスとはひと味もふた味も
違って異彩を放っていた.
                                             つづく
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コメント 1

トースケ

執筆快調! 現在第6章まで書き上がりました.
最終的には8~9章になるかも.

そうそう、わかりやすいようにサブタイトルをつけてみました.
by トースケ (2010-05-27 22:21) 

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